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  • 執筆者の写真下枝宣史

新型コロナウイルス感染症(CoVID-19) まとめ対談その④/4 <2020年上半期>

(^ω^): ワクチンとか予防薬、特効薬の研究や開発は進んでますか?


 いまのところ、特効薬の候補はまだないです。また、これさえ食べれば予防できるという都合の良い食べ物も見つかっていません。


(^ω^): あらら、さらっと残念なコトを・・・。


 ワクチン開発では、オックスフォード大学とイギリスや中国の製薬会社などが治療法臨床試験を開始しています。このワクチンを打つと、先ほどお話しした抗体を、大量に産生させられると言います。


(^ω^): おっ、また良い話が出てきましたね!


 ただし、大量の抗体ができてもその中には、ウイルスにくっついて戦えるものと、ただくっつくだけで戦う機能がない抗体とがあるんです。戦える抗体の割合が少なければ、実際の予防効果は低いかもしれません。例えばAIDSではワクチンを作っても、戦える抗体が産成されないので、効果がないです。


(^ω^): 新型コロナでも、抗体さえたくさんできれば良いってわけではなさそうなんですね。


 むしろ、新型コロナでは抗体の出番はあまりなくて、代わりにリンパ球T細胞に特別な役割がありそうなことが今、解明されつつあります。ワクチンを開発できなくても、T細胞の機能を応用した新しい予防薬や治療薬が開発される希望があります。


(^ω^): それは最近になって分かってきたことなんですか?


 まさに現在、最先端で免疫学者さんたちが研究を進めているところです。もしかしたらこれまでの免疫学の常識が覆り、考え方が塗り替えられていくのかも知れません。


(^ω^): ワクチンや薬に頼らないでも、ある程度の人数が新型コロナに罹って免疫になれば、それ以上は流行しなくなるという考え方もあるんですよね。


「集団免疫」といいます。なんだか、ファッションの話に似ていますね。ある程度の人数が流行に乗ってしまうと、もう当たり前になって飽きられてしまい、それ以上は流行らなくなるみたいな。


(^ω^): 新型コロナは集団免疫の方法で乗り越えられるんでしょうか?


 人口のおよそ60%が免疫を獲得できれば、なんの対策もしないでも集団免疫が成立して流行が収まる計算になります。まあ、たいていの国では何らかの感染予防対策を採っていますから、ウイルスにとってはその分だけ不利になりますよね。新生活様式などの対策が徹底すれば、人口の20%が免疫を獲得すればOKという試算結果もあります。


(^ω^): おお、意外に良いじゃないですか。それならワクチンができなくても、大丈夫なんじゃないですか?


 日本では8月中旬に第二波のピークを超えてきているような様子ですね。このまま都合よく行ってくれればもっと少なくても、計算上は集団免疫が成立します。ただし、これは日本国内に限って考えた理論上の話でして、海外との人や物の行き来を完全にゼロにはできませんし、ウイルスの性質もどんどん変異していくなど、不確定な要素がてんこ盛りですから、ちょっとしたきっかけでいつなんどき、状況がひっくり返るかもわかりません。


(^ω^): 良さそうな話をきくたびに「でも」とか「ただし」とかが必ずついてくるので、ついつい一喜一憂してしまいますね。でも、それは心を強く保つためには良くないと言いますよね。あまり気にかけ過ぎても、それはそれで体調を悪くする原因になると。


 はい。なにしろ学者や医者というのは、いつでも最悪の状況を前提に考えようとする習性がありますから、どうしても但し書きをつけてしまいます。


(^ω^): あ〜、お医者さんあるあるですね〜


 集団免疫が成立するためには大前提がありまして、ひとたび抗体ができたら二度とその病気にかからなくなるという「終生免疫」を獲得できる必要があります。はしかや風疹などは、子どもの頃に一度かかれば終生免疫を獲得でき、二度とかかりませんし、ワクチンも有効ですから、そういうタイプの病気はいまさら大流行しないわけです。


(^ω^): ここで「ところが」・・・ですね? 新型コロナはそういうタイプではない、と。


 そうなんです。夏風邪は、繰り返しひきますよね。原因の20%くらいは在来型のコロナウイルスだと言われています。その研究によると、在来型コロナに対する抗体は長持ちせずに消えてしまい、終生免疫は獲得できず、そのため集団免疫も成立しないことがわかっています。


(^ω^): 夏風邪は・・・ナントカがひくって、昔はくちさがないこと言われてましたが。


 私も去年の夏まで、毎年のようにひどい鼻風邪をひきましたので、その諺みたいなのは当たってるのかもね。


(^ω^): 暑いからってヘソ出して寝てるからじゃないんですか? しもドク、そのおなか、もう少し引っ込めたほうがいいですよ、コロナに負けないためにも。


 エヘン。スウェーデンでは、新型コロナに対する集団免疫の獲得を目指していわゆる「ノーガード対応」をした結果、北欧諸国の中では飛び抜けて多い死者を出してしまい死亡率は7%、現在でも毎日、220人ほどが新規に感染しています。コロナウイルスは在来型も新型も、終生免疫になりにくい性質がありそうで、この点はインフルエンザと似ています。それを裏付ける基礎的研究の報告も複数出てきています。


(^ω^): 風邪の特効薬や予防薬を発明できたらノーベル賞モノ、って昔からお医者さんの中では言われてきたんでしょ? そういう意味では、いわゆる風邪と同じだという言い方もアリなんですね。


 はい。もし集団免疫が成立しないなら、新型コロナはインフルエンザのように、毎年季節性に流行するウイルス性呼吸器感染症として定着していくのでしょう。とはいえもちろん、新たな検査法や薬の開発と、新生活様式の定着との相乗効果によって、いずれは収束に持ち込める可能性もまだゼロではないです。

 グラフをご覧ください。上は2020年1月からの、肺炎や風邪などで検出された病原性ウイルスの報告数、下は2019年の年間報告数です。今年2月から、目を見張るほどの減少が続いています。受診控えだとか、新型コロナに人手を取られて他のウイルスを検査している余裕がないだとか、要因はいくつも考えつきますが、私はやはり、みなさんの予防意識の高まりが形に現れたものだと信じます。

 自分のために、石鹸で指先を洗いましょう。他者のためにマスクをしましょう。現時点で私たちが今を生きていくための心構えは、期待は持たず、希望は捨てず、だと思っています。

 この記事の内容は、9月1日現在での以下からの情報によっており、すべてインターネットで公開されています。厚生労働省、日本疫学会、大阪大学免疫学フロンティア研究センター、藤田医科大学、北里研究所、内閣府食品安全委員会、世界保健機構、米国疾病対策予防センター、米国医師会、オックスフォード大学、ジョンス・ホプキンス大学、ロイター/共同通信社。

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